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2011年2月 6日 (日)

108物語 終わらない夜 2

 俺は私立探偵、高杉晋作。
 誰もが一度は聞いた覚えのある名前だ。
 歴史上の同姓同名の男とまったく関係がない。
 俺は生まれた時から、不思議な力がある。
 一度も行ったことがない場所をあたかもそこに存在するように見る能力だ。
 人はそれを『千里眼』というらしい。
  俺は今、尾行の真っ最中である。

 俺には真美と由美という女子高へ通う娘が二人いる。
 親馬鹿で申し訳がないが、二人ともかなりの美人である。
 よく二人で原宿や渋谷を歩いているとモデルのスカウトに声を掛けられる。
 10年前に別れた元妻のマンションで暮らしているが、二人とも俺の探偵事務所にやってくる。
 今では俺の貴重な助手として、勉学の合間を縫って手伝いをしているのだ。

 俺は旧式の携帯電話を取り出し、事務所に電話を入れた。
「はい、高杉私立探偵事務所です」
 真美が電話に出た。
 なんとも愛くるしい声が返ってきた。
「俺だ」
 と俺はいつものように娘に対しても、スタイルを変えない。
「先生、どこにいるのよ」
 と真美はかなり怒気を含んだ声を上げた。
 それというのも今日は彼女達らと約束した大切な日なのだ。
 17年前の今日、2月2日に彼女達は一卵性双生児として誕生した。
 つまり今日は彼女達の誕生日、そして俺は夕食の約束をしていた。
「今、誘拐犯人を追っている」
 これだけで十分である。
 真美と由美がどういう性癖であるか、さすがに父親でありながら触れられない秘密であるが、彼女達の一番の興味がなんであるのか、それだけは、はずすことがないと自負している。
『スリルとサスペンス』
 このキーワードほど彼女達を興奮させるものはない。
「ええ、誘拐事件、犯人を尾行中なのね」
 明らかに、興奮した声がした。
「パパ今どこ」
 受話器を奪った由美が電話を変わったらしい。
「それより、渋谷のプラザホテルの712号室へ急いでくれ、そこに秋元祐樹が縛られたままベットにいるはずだ」
「ええ、あの失踪した秋元祐樹・・・」
 絶叫したように聞こえた。
「ええ、祐樹・・・」
 受話器を通して、真美の叫びが聞こえた。
「今日は特別に俺が許す、例の力を使って急いでくれ」
 と俺は言ったが、彼女達はたぶん俺に許しを得ずとも、例の力を使うのだろうと思った。
「わかったわ、先生、犯人捕まえてね」
 と由美は言うやいなや受話器を激しく電話機へ叩きつけたらしい。
 その後、彼女達が何を始めるのか一瞬想像してしまった。
 娘二人の姿態を想像する情けない父親なのである。

 その頃、高杉私立探偵事務所の応接の長椅子で真美と由美は熱い口付けを交わしていた。
「誘拐事件、秋元祐樹」とどちらの口からも漏れる。
 セラー服姿の二人はスカートをお互い巻くり上げ、お揃いのピンクのティーバックのフロントのわずかな布の横から指を入れあっていた。
「ああ、硬く勃起しているわ」
 熱い息が由美の耳にかかる。
「まだよ、まだよ、あわせて」
 と真美が切なく小さな声で囁く。
「ああ、だめ真美・・」
「いいわ、私も・・・」
「ああ」
 と同時に叫んだ。
 その瞬間、真美と由美を包むように光が輝いた。
 そして光が徐々に薄れ、二人の姿が長椅子から消え失せた。
 真美と由美はテレポーテーションの超能力がある。
 その力を発現するためには二人で協力し合わなければならない。
 父親からは硬く禁じられている。
 真美と由美はレズっこである。
 それぞれ彼女がいるが、彼女とエッチをしてもこの能力は発現しない。
 つまり姉妹でエッチした時だけ、テレポートできるのだ。

 秋元祐樹は身体をきつくロープで縛られ、口にタオルを噛まされたままベットに横たわっていた。
 超ミニスカートから伸びた美脚の踝に痛々しくロープで締め上げられ赤い蚯蚓《みみず》腫れが妖《なまめ》しかった。
 眼は空ろで、今自分の置かれている境遇を恨めしげに視点の定まらないままであった。
 その眼に突然、炎が揺らめいた。
 次の瞬間、セーラ服姿の女子高生が忽然と床の中かから飛び出してきた。
『ええ』と祐樹は驚いて声を上げたが、猿轡《さるぐつわ》を噛まさせていたので声にはならなかった。
 眼を凝らすと女子高生はお互いのスカートの中をまさぐっている。
 熱い吐息を吐いて、お互いの唇を求め合っていた。
 秋元は恐怖を感じた後、状況を理解できないで身悶えた。
 床でちょっとの間、余韻を楽しんだ女子高生達は、ようやく立ち上がり身づくろいを正すと、祐樹のベットに近づいてきた。
「だいじょぶですか」
 とそっくりな顔をしたかわいい顔の一人が尋ねてきた。
 祐樹は事態を飲み込めないでいたが、声を上げようと必死で叫んだ。
『た・す・け・て』
 真美と由美は、祐樹を縛り上げているロープを悪戦苦闘の後、解いた。
 祐樹は二人に抱きかかえられて、起き上がり、ようやく猿轡をはずしてもらった。
「ありがとう・・・」
 祐樹は涙声で感謝した。
「秋元祐樹さんですよね」
 と由美。
「ええ、祐樹です」
「早くここから安全なところへ・・」
 と真美はいった。
 もちろん祐樹は早く逃げたかった。
 だが、彼女は一つの疑問を持っていた。
「あなたたち、どこから来たの」
 当然の質問である。
 ましてエッチをしていたまま忽然と現れた。
 祐樹でなくても聞きたくなる。
「高杉私立探偵事務所の高杉真美と由美です」
 と真美と由美は同時に答えた。
「高杉私立探偵事務所?」
「ええ、先生からあなたを助けるように指示がありました」
 祐樹はすこしずつ恐怖から開放されると、さきほどの二人の姿態を思い出していた。
 マスコミには知られていない、祐樹の秘密、それは祐樹もレズっこだった。
『このふたりをペットにしたい』
 と祐樹は自分の欲望を必死に堪えていた。
「私、祐樹さん好きよ」
 と真美が長い祐樹の右脚を摩ってきた。
『だめよ』と祐樹は声を発っしそうになったが、できなかった。
 三人がプラザホテルを出たのがそれから三時間後ということを高杉は報告を受けていなかった。

 男は多摩センターで小田急の乗り換え、終点の唐木田駅で下車した。
 駅前で客待ちのタクシーを拾い乗り込んだ。
 俺も一台タクシーを捕まえ、
「前のタクシーを尾行してくれ」
 と言った。
「お、刑事さんですか」
 俺はしかたなそうに、背広の内ポケットから、偽の警察手帳を取り出した。
「こりゃすげ・・・」
 と運転手は急に車のスピードを上げた。
「おい、君近づきすぎだよ」
「おっと、すいません」
 車は尾行する男を乗せた車と並走していた。
 俺は後部座席のギャングスタイルの男を確認するため、何気なさを装い、視線を向けた。
 なんと男は窓越しにピースサインを出して微笑んでいた。
『くそ、あいつは最初から俺が付ける事を知っていたな・・・』
 と俺は罠に嵌《はま》った獣のような気分に陥った。
 あのメイド姿の女は最初から俺をこの罠に陥れるための仕掛けの一つなのか、そんなことを考えながら、俺はなすすべもなく奴の車に従った。

 窓から注ぐ星々に俺は思わず、星に願いのフレーズを口笛で繰り返した。
 まだスターダストは確認できないでいた。

 (続)

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